
銀行のAI投資は拡大している。だが、導入を成果に変えられるか——そこが、次世代の金融機関を決定づける分岐点になる。
84%の銀行が組織レベルでAIを本格活用。次なる問いは、その成果をどう測るか。
nCinoは米国の銀行経営陣150名を対象に調査を実施し、金融機関がAI戦略・導入・効果測定にどう取り組んでいるかを明らかにしました。今回の「銀行業界のAI活用実態調査」は、まさに時代の重要な転換点を捉えています。業界は試験的な取り組みの段階を卒業し、データ整備、人材育成、投資対効果といったより本質的な問いに向き合っています。
銀行は、もはやAIが重要かどうかについては議論していません。どうすれば大規模に機能させられるか、成果をどう測るか、次のステージに向けて人材をどう育てるか——問いはそこに移っています。
活用しているAIの種類は、生成AIが91%でトップ——銀行はAIに全力投資
銀行経営陣の84%が、自組織でAI活用を積極的に進めていると回答しました。また91%近くが、AIによって行員がより付加価値の高い顧客対応業務に集中できるようになると考えています。
一つのAIを選んで様子を見る、という姿勢はもうありません。生成AIを筆頭に、予測AI、エージェントAIすべてを異なる成熟度で展開しており、使えば使うほど習熟度も上がっています。
経営陣の89%が、5年以内に「人とAIの協働体制」を予測
銀行経営陣の約9割が、今後5年以内に自組織がAIエージェントと人との共同で運営されるようになると見ています。この変化はすでに始まっており、エージェントAIの登場によって多くの銀行業務が大きく変わりつつあります。
各行は人とAIがともに働く銀行の実現に向け、リスキリングプログラムに投資しています。現時点での日常的なAI活用は、文書の要約・情報検索・データ分析が中心です。今後2年間では、規制調査・与信モニタリング・顧客開拓といった中核業務へと活用領域が広がると予測しており、サポート業務から本業へのシフトが鮮明になっています。
データ品質への自信は89%——しかし93%がガバナンス課題を抱える
自組織のデータは整備されていると自信を持つ経営陣が多い一方、93%が少なくとも一つのデータガバナンス課題を挙げており、その中でも「データのサイロ化」が最多でした。この自信と実態のギャップは見逃せません。ここを埋めた金融機関は、AI投資からより大きな価値を引き出せるはずです。
経営陣の方向感は明確です。94%がバラバラなシステムでAIを個別活用するより、一気通貫の統合AI基盤の方が高い価値をもたらすと回答しています。部分最適ではなく、全業務をつなぐ形でAIを活用するモデルへ——そこを目指しています。
AI戦略は策定済みだが、ROI測定は追いついていない
銀行経営陣の89%が明確なAI戦略を持っています。経営層と行員の認識は概ね一致しており、戦略を形成する上ではCTO・CIOといった行内のIT役員が最も信頼される存在となっています。
課題は効果測定です。多くの金融機関がROIの追求よりAI導入そのものを優先しており、ROIに紐づくKPIを設定している銀行は少ないです。現段階では無理もない話ですが、AIが何をもたらしているか測定できなければ、どの投資が機能していてどこを見直すべきかが分からないからです。
AI戦略における行内の認識のズレはコストと時間の損失につながります。後から効果測定を組み込もうとするのではなく、最初から仕組みとして埋め込んだ金融機関が、技術の成熟とともに優位に立てるでしょう。
銀行が今、動くべき3つの領域
以下は本調査で明らかになった、金融機関がAI活用を加速するための3つのポイントです。
投資を成果に結びつける:AI投資は業界全体で拡大しています。収益・効率・顧客価値に紐づいた明確な成功指標を定めた金融機関だけが、投資を実際の成果へと転換できます。
データへの自信を、データの統合へ:金融機関のデータへの自信は高まっています。しかし、断片化・サイロ・ガバナンスの課題は依然として存在し、これを解消しなければAIが本来もたらせる価値を最大限に引き出すことはできません。
人とAIが共に働く組織モデルを構築する:AIが定型業務を担うようになった今、銀行はチームの働き方・役割・人の判断とAIの能力をどう組み合わせるかを再設計する必要があります。ここをうまく設計できた金融機関が、スピードと顧客対応力で競合を引き離していくでしょう。




